呪い殺せ 呪い殺して先へ行け
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てのひら怪談2 全作感想文・1
 お情けだかまぐれだかで、『てのひら怪談2』に作品を掲載していただいてしまったので、『てのひら怪談』ムーブメントの宣伝に一役買ってご恩に報いようと、1年近くほったらかしにしていた、このブログの存在を思い出し、『てのひら怪談2』掲載全100作の感想を書いてみる事にしました。
 これというのも、全作品レビューに挑戦されている諸先輩方が呼び水となってくれたおかげ。自分のは批評というほどのものではなく、ただの感想の垂れ流しに過ぎないけれども、少しでも何かのお役に立てればと。

 ちなみにネタバレには一切配慮していないので、かならず『てのひら怪談2』を読んだ上でご参照下さい。ご購入はビーケーワンで。できれば『幻妖ブックブログ』経由で。

 なお、自分は別サイトに書いている日記に、「感情的なだけで説得力がまるでない。上から目線で何様のつもりだ」とお叱りのコメントを頂戴した経験があるので、この感想も「感情的で説得力ゼロで上から目線の何様ブログ」だということをご了承の上、自己責任で読んで下さい。
 



クジラマク「赤き丸」(優秀賞受賞作)
 個人的に巻中のベスト。WEB上で発表された時から、他の作品群とは明らかに異なる輝きを放っていた。しかし、これをド頭に持ってくる構成も凄いなあ。淡々とした何でもない穏やかな語り口調と、異常極まりない内容のギャップに、読んでる側の日常性のバランスまで崩されそうな危うさを覚える。
 初出時に、最後の一行で、え?と思うような誤字があったけど、本書では修正されていて安心した。

岩里藁人「シャボン魂」
 哀切でノスタルジックなジェントル怪談・・・と思えるけど、よく読みなおしてみると、果たしてそれだけだろうか?少年に口づけされた直後に姿を消す少女の魂が、ぱちんと弾けて飛び散った赤い飛沫に託して伝えようとした思いは、本当に残された側が期待してしまうような、美しいものだったのだろうか。
 赤という色の持つ美しさも禍々しさも表現されている。どこまでも余韻が続く佳品。せんちめんたるの心地よさが、水谷準の短編を思わせる。

根多加良「呼び止めてしまった」
 なんだろう、これは。様々な読み方ができると思うけど、自分の解釈としては、自殺したノブが復讐のために健一に憑りつきかけていたところを、「呼び止めてしまった」ってことなのかな、と。ストーリーの本線よりも、何がどうなっているのかよく分からない公園の情景描写や、ひたすら笑い続けるいじめっ子の様子、また、「ゲタゲタガハガハ」と随分ぞんざいに表現される笑い声など、書き手の意図がどこにあるのか不明なことが不気味。

阿丸まり「水恋鳥」
 これは良いね。ただでさえ800字という制限がある中で、空白を多用したわずかな言葉で、よくこれだけ深い物語を封じ込めたものだと感心した。親をいじめ殺したために、自分のくちばしの赤に怯え、水が飲めずに苦しみ続ける「水恋鳥」のエピソードも充分に魅惑的だけど、そこに死んだお婆さんと息子の関係がオーバーラップされ、さらに、それでも息子を案じるお婆さんの心情のやるせなさが胸に沁みる。

都田万葉「未練の檻」
 あんまり好きじゃないなあ、こういうのは。扱っているテーマが未練や嫉妬という過剰な情念であるところへさして、文体も装飾的でやや大仰な印象なので、ちょっと胃もたれがした。
 この作品とは直接関係ない事だけど、どうも自分は「女性にしか分からない怖さ」だの「男だけのロマン」みたいなものに嫌悪感しか持てない。それならまだ珍プレー好プレー大賞の「くう〜、男にしか分からない痛さ!」とかのほうが笑えるだけマシだわな。みのもんたもまだ嫌いじゃなかった、あの頃は。今じゃただのゴキブリだけど。

宮間波「深夜の騒音」
 これはさっぱり分からなかった。暴走族がなにやら怪しのものに取り囲まれて、異界へ連れ去られようとしている(それでヤンキーホーンがかすれている?)。そして、それを付近の住民が何人も目撃していながら、自分の日常を守るために見て見ぬ振りをしている、という二重の恐怖なんだろうか。
 考えれば考えるほど恐怖が深まる怪談と、考え込まないと何が怖いのか分からない怪談は別物だと思う。文字数の問題ではなく、説明不足に感じた。

狩野いくみ「赤地蔵」(佳作受賞作)
 出た!これは怖かった。
 地蔵が子供の首を噛み切るという、かなりショッキングな話でありながら、民話風のモノクロームな雰囲気がどぎつさを抑えていて好感。地蔵がごとごと庭に出てくるあたりに漂うほんのりしたユーモアから、直後の凄惨な場面への転換が見事。
 でも、若様と地蔵のどちらが祟りをなす存在だったのか、読者に判断を委ねる結末はどうなんだろうか。もちろん、あまりに因果譚めいているのはマイナスだろうけど、なんでも明確な解釈をぼかさなければいけない、ってものでもないのでは。結局、お家が滅ぶのは三年後か十数年後かの違いがあっただけじゃない、と少しだけ思ってしまった。

高橋史絵「石がものいう話」
 んー、これは今ひとつ。四肢の関節がねじ曲がり気も狂わんばかりに痛むリュウマチのほうが、落雷による絶命よりもよっぽど祟りっぽいと思うんだけど。
 「周氏、愚かなり!」って科白からすると、傲慢で非情な金持ちへの天罰が下ったように読み取れるし、周氏が虐待していた女性が石の中から現れた鬼神なのであれば、もっと個人的な怨恨による祟りと思える。いろんな因果の可能性をどこにも結びつけずに、「石がものを言うのは不吉だね」で済ませる民衆の姿を楽しむべきなのかもしれないけれど、自分としては中途半端な印象を受けた。

暮木椎哉「阿吽の衝突」
 かわいい。タイトルも秀逸。



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19:45 てのひら怪談 〜怪異を僕のてのひらに〜 comments(0)
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